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2005年8月

2005/08/28

過去ログ95

075:続 里坂季夜様
 E弦のチューニングだけあわぬままトレモロ続く水無月文月
 どうもこの不協和音は故意らしい無骨にバスを抱きしめてみる
非常に美しい言葉を選んで、重ねています。中抜けするように平仮名が続き、
全体の雰囲気を固くなり過ぎないようにしてあるのも良いと思います。

020:楽 鳴井有葉様
 禁断の果実も土に腐りつつゆけばゆくほど遠い楽園
 姫林檎のみこめぬまま少年はおとなの目指す楽園を去る
ゆけばゆくほど遠い楽園、というフレーズがいいですね。映画のタイトルでもいい。
そのオープニングに、腐りかけた林檎が落ちた荒野を歩く男女がいて。
できればセピアカラーの単色で御願いします。こういう絵になるお歌、好き。

022:弓 鳴井有葉様
 もう君は嫌いだ熱い弓を張る 近くにも遠くにも信号機
 熱が出るこれで逢わない口実になる安堵かもワインがほしい
前半の伏線によって。後半の信号機ときたら、全部指定なしで赤信号なんです。
勢いがあるというか、互いの影響力まで計算に入れた言葉選びがいいですね。
見えない部分を、たった31文字から、読み手に紡がせる上級技です。
料理の本なんかで、すごく美味しそうな完成品の写真ではなくて、
作業の細かいところやおいしそうな原材料をページに散りばめているみたい。

044:香 水須ゆき子様
 移り香をとがめるほどの熱もなくミネラル麦茶を注ぎ足す夜更け
 油断したあかしをゆるす罠である乾いたこころにミネラル注ぐ
さらさらとした質感、麦茶の懐かしくも淡泊な味わいが、移り香という生々しさに
無言の抵抗をしているよう。熱はないけれど、届いている咎める気持ち。

062:風邪 林 ゆみ様
 風邪ぐらい寝不足ぐらい生理痛ぐらいじゃ休めぬ年代なのだ
 明日わたしなにをしようか休んでるあの子の仕事はゴミ箱行きで
ものすごく、同感です。風邪だの、二日酔いだので休むな~!眠い?だるい?
仕事も信用も失うよ、そんなことで休んだら。休んで良いのは普段人の数倍働いて
他人の仕事もやっている人だけだよ。そういう人なら、やっていた他人の仕事は
本人に戻せばいいし、その勢いで数日休んだ分なんてすぐ片付けるもの。
休み癖、さぼり癖、大反対~でございます。

074:麻酔 上澄眠様
 馬鹿になるために麻酔をうっていく会いたい人に会いにいくのに
 騙されてあげたいこともあるあなた会えば素直に笑えなくても
結句のリフレインが、麻酔の気怠い「墜ちる」感じとマッチします。素敵。


今日はここまで。まだ返歌というか、やっていますね。はい。
昨日もやりたかったけれど、kei様の体調が気がかりでして・・・
素敵なお歌を頂きました。ちょっと泣きました。
詳しくは昨日の「コメント」に出ていますが。

きっとまた、会えるんだと信じて待っています。
それが叶っても、叶わなくても、これから先一緒に、
私に素晴らしいインパクトを与えてくださった恩人として
その影響を受けた私が、まずは進んでいかなくちゃ。

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2005/08/27

kei様のオマージュ

私によくしてkei様がしばし休養することになった。
絶対帰ってきてね、とは言えないけれど、たまに見に来て。
このマラソンのスタートラインからぴっかぴかの言葉を、
私に送って下さった素晴らしい歌人様でした。

いくつか選歌するのも、いいかと思ったけれど、
どれも良いので、控えます。

船坂様。私はあなたと出合えて良かった。
いろいろ恩を受けました。
快方に向かいますよう、お祈りしております。

なので、オマージュだけど歌はなし。
語る場所はたくさんあるといいね。
この空白を歌で埋めて下さるのは、kei様です。

お待ちしておりますから、ね。

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2005/08/24

過去ログ94

052:螺旋  ももか様
 乗り越えることなく壁へ添ふこころ生は螺旋の軌跡にてあれば
 生きてゆく道こそ螺旋まっすぐになどきれい事棄てて抱き合う
すごい。前ログでは破調が印象的だったももか様、あっというまの進化です。
わざと狙ったような破調も素敵でしたが、正統派もいいですね。

056:松  ももか様
 注連縄の張直されし菊日和夫婦岩には松の傾き
 縛られて畏まりおるめおと岩むすめのように清らかな菊
注連縄(しめなわ)ってすんなり読めないときついけど、いい光景です。
日本庭園の中でも特別美しい。岩と松ゆえに。

002:色 遠山那由様
 臆病な言挙げをする 色づかぬまま地に墜ちる林檎のように
 臆病なふりも勇気だ毒りんご喉ふるわせて呑み込んでみろ
この歌もいい雰囲気です。絵にはなるが写真にならぬ光景、好きなのです。

069:花束 里坂季夜様
 花束も言葉もさかさづりのまま乾いていった さようなら春
 わたくしは磔刑の魔女いいわけはせぬからどうか骸に薔薇を
さかさづり、いいですよ~、絶望的な色気。

090:薔薇 萱野芙蓉様
 たそかれは化石の色におりたちぬ薔薇をさうびとよぶ唇へ
 うつくしく凍る言葉か冬薔薇(そうび)雷鳴はるか岩砕く夜
寒雷やびりりびりりと梁のおと、を思わせるのです。教科書では冬薔薇、
並んでいたと記憶します。

009:眠 小野伊都子様
 眠たくてたまらない朝ゆんゆんと金魚ゆらめくこめかみ辺り
 真夏日の和金になろう緋のせなをふゆらふゆらと潜らせてみる
擬音が素敵で、まねっこしてみました。

019:アラビア 鳴井有葉様
 アラビアの香水商の店先の香水瓶の中の旋律
 乳香をひと振り没香ひとつまみ聖なる甘いころものアラビア
香水瓶がいいですね。エキゾチック、オリエンタル、どっち?あ、アラビアか。

039:紫 水須ゆき子様
 別れれば夫婦は他人うっすらと螺旋を描き紫煙は消える
 未練かと問われる 紫煙を吸い込んで黙す あなたの嫌いなたばこ
もうちょっと暗くしてみました。マスター、ダウンライトで~
ご注文はマルガリータで?え、そんなんじゃない、と。
ではおふたり別々に、オールドファッションドをどうぞ。お好みの味で。
ええ、追加の角砂糖もご所望でしたら。いえ、ガムシロップはお断りです。
もう少し粋になされては如何ですか?(by Betty,sBlue支配人)

026:蜘蛛 百田きりん様
 あきらめるとはなんだろう蜘蛛の巣にしずく連なる 愛しい 愛しい
 わたくしに100度きかせてそのことば蜘蛛が溺れて蓮に乗るまで
結句のリフレインに引かれました。言って、わたしにも。

058:剣 飛鳥川いるか様
 カルピスを濃い目にいれる刀剣の名に似る薬のみこむために
 飲みにくい否飲むのいや錠剤は知らず知らずにビフィズス菌だ
剣刀に似ている・・・コントミン?じゃないか。ま、飲もうよ。きっと平気さ。


また、おだって返歌モードでやってみました。
「ふざけるな~」も歓迎。叱ってください(マゾ?)
体調・・・わる。寝た方がいいのかな~と少々弱気。

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2005/08/23

過去ログ93

048:袖 和良珠子様
 片袖に吸われるだろう涙でも汗でもなくこの滴りゆくものは
 利き腕の袖にこころのうやむやを全て委ねて気丈な嘆き
今日は、眠くなってくれないので趣旨を変えてみました。返歌です。
作者様のクレーム覚悟。あはは。逆に今日のコレクションは、私が
返歌したいな~と思ったお歌たちです。

037:汗 水須ゆき子様
 汗ばむと山の匂いがするひとを揺すれば満ちて来る冬の水
 あたたかい体臭などに甘えてるその奥底の泉もふくめ
太字がベティの短歌。今日は返歌モードです。わかりにくい感想じゃ。

049:ワイン Harry様
 ワイングラスペアで買へども飲めぬ妻は小さき花を入れて飾れり
 一緒なのあなたとグラス重ねればボルドーいろの薔薇が映えるわ
今日はジデンふみお様スペシャル?ここにきて魅力爆発。

090:薔薇 ジテンふみお様
 パン売り場に薔薇を持つのが三人も並んでさらに何パンを買う
 ディナーにはバケットを是非そう言って薔薇の同盟ひとり抜け駆け

095:翼 ジテンふみお様
 おそらくはここが翼の痕だろう肩甲骨にGを感じる
 じくじくと天国のおと溜めている本当は寝違えたんだよ肩を

098:未来 ジテンふみお様
 いつだってひまわりの指す方向に未来があれば未来があれば
 焦がれても絶望のみが輝いてだから向日葵しあわせ探せ

003:つぼみ 高松凛様
 咲けば散る花の理(ことわり) 桃色の薔薇のつぼみの造花を飾る
 写真より生きているでしょこのつぼみわたしの底の記憶のにおい

041:迷  minto様
 肌寒き霧雨の中いつまでも薔薇の迷路にあの日のやうに
 冷えないで深紅の薔薇が泣いている出口はこちら棘かきわけて

049:ワイン 飛鳥川いるか様
 ひそやかに育つ殺意を潰す午後 ぷるるんワインゼリー震えて
 寒天の培養地から殺意の芽酔わせろワインゼリーに移せ

003:つぼみ 大江ケンジ様
 明け方につぼみの夢でうなされる咲いたら負けのような気がする
 咲かないでその芳香はだれのものちいさい指で目蓋抑える


っとまあ、無謀な企画でした。作者様のお怒りコメントお待ちしています。
すごすご・・・

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2005/08/21

過去ログ92

005:サラダ  ももか様
 早起きのあなたが作るサラダなのにヨーグルトがおふとんのよう
破調が多い方ですが、このお歌の破調はそう気にならないかも。
ヨーグルトが「おふとん」というところに、ほんわかと温かいものを感じます。

024:チョコレート 美和知空様
 なめてなめてチョコレートは恋に似て醜い脂肪に包まれていく
チョコレート、恋、そしてどんでん返しに「醜い脂肪」の並べ方が新鮮。
きっと、甘いところを舐めている間に、ぶくぶくと感情が肥大するのかな。

002:色 春村蓬様
 どのやうな色でも冬の終はりにはかたいつぱうが褪せる手袋
お待ちしておりました(笑)利き手の手袋だけ、ワンシーズンでなんとなく
くたびれてしまうのを、上手にお題と絡めていると思います。「どのやうな色」が
またいい感じ。子どものカラフルなやつも、大人のダークなやつも、
毛糸でもレザーでも、みんな色褪せて。

090:薔薇 常盤義昌様
 冬枯れの薔薇園に来てながめたる枝ことごとく灰色の骨
薔薇のお題で骨が出てくるあたりで、まず目を引きます。灰色の骨。
花も葉も失った薔薇なら、そういう感じかもしれません。淡々としている分、
何故冬枯れの薔薇園に行こうと思い立ったのか、心情描写が
ひっそりと込められているようです。

089:巻 織田香寿子様
 心地よき日びの過ぎしを振り向けり怠慢のなかの老いを巻き取る
後半がすごく好きです。老いを巻き取る、かあ。前向きな感じ。

100:マラソン 織田香寿子様
 人はみなマラソン走者われもまた痴呆の姑の手を握り締める
このお題の中で、素晴らしい人情と温かさを滲ませるお歌だと思います。
これで100出そろってしまいましたが、温かな生活感と情の通ったお歌が
とても好きでした。心温まる歌いっぷりです。


今日は、ここまで。やっぱり私、波があるようです。
しかも、だいたいにして、私の感じ方だけで感想を書いてしまっているので
作者様の意図しない、とんちんかんなことを結構言っている気がします。
自分は走り終わってしまい、相変わらず本歌取りにお邪魔して遊んでいます。
他にも楽しげな企画などございましたら、是非お誘い下さい。

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2005/08/16

過去ログ91

035:禁 嶋本ユーキ様
 解禁日水面に銀の波立てて糸の先には夏も小鮎も
小鮎が新鮮でいいです。ただ、漢字がちょっと立て込んだ感じがするので、
例えば「波たてて」「糸のさき」と2箇所平仮名にするだけでも、
ずいぶんと柔らかくなると思いました。もちろん好きずきなのですが、
フレッシュな視点を強調するのに有効かな、と。

030:橋 水須ゆき子様
 橋姫は待つ女ゆえ鬼となる美しからむ鬼に降る花
待つ女。鬼は鬼でも美しい鬼なのですね。このお題は、橋そのものと
「橋本」だとか人名にするパターンと、地名にするパターンが散見されますが
ここで橋姫など持ってきて、ちゃんと美しくまとまっているところに
詠みこなす語彙の豊富さと柔軟性を感じました。

029:ならずもの 紺乃卓海様
 真昼間のならずものから潮騒があふれるんだね 鳩が群がる
いいもの(人)みーつけた、状態です。このログのお歌はどれも捨てがたい。
そんな中2首拾わせて頂きましたが、言葉遣いが巧みで新鮮です。
奇をてらうでもなく、素直につながった言葉が詩的であるのは凄いと思う。
100首出そろったら、全部まとめて読みたいです。

030:橋 紺乃卓海様
欄干に燃えるびろうど打ち捨てて橋はほのおに炎は闇に
これ、2首めです。漢字の配置が絶妙。例えば「びろうど」が漢字だと
もの凄く重たくなってしまう。「ほのお」「炎」の使い分けもいいです。

070:曲 上澄眠様
 すこしだけつくえが曲がっているような気がいつまでもする本試験
緊張感がよく伝わってきます。就職試験でも進学試験でも昇任試験でも、
何だかぐわっと歪んだ感覚って、緊張すると出てきます。「いつまでもする」は
いつまでも、が発句に来るのをぐるんと倒置した表現と思いますが、
それが不安定さをよく表現していると思いました。

017:陸 笠井烏子様
 女なら波、男だったら陸、遠い目がきらきら揺れてあゝあれは海
結句がすごく好き。この方のお歌もこのログたくさん拝読しました。どれも素敵で
中でも私の一押しです。女が波、男は陸。不安定さと重厚感。いいです。

044:香 飛鳥川いるか様
 なまぬるき夜のダチュラの香を嗅げば死刑執行人めく我か
ダチュラ、そして死刑執行人。湿度を孕んだ夏の夜の、濃厚な香りする場面。
ここでこう持ってくるか、という小道具立ての巧みさが目を引きました。

070:曲 五十嵐きよみ様
 返してはまた折り曲げてキャラメルの包みで鶴を折る間の無心
歌にするとあらためて「ああ、なるほど~」です。私もよくチェルシーの紙でやります。
無意味に鶴が卓上に整列していたりして。何も考えてないんですよ。その間。
私だけじゃないんだ~という親しみを覚えます。


今日はまあまあ収穫できました。他にも勿論佳いお歌がたくさんありました。
あくまで「今私が読ませて頂いて心に留まったお歌」なのです。
もしかしたら、これが他のログにあることでぐんと目立つお歌だとか、
同じ方のお歌を固めることでテーマが見えて好きになるとか、
いろいろな要素があると思います。
感想も結構勝手なことを書いていますが、ご了承下さい。

残暑がまだまだ引きません。ここ、北海道なんだけど・・・

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2005/08/14

過去ログ90

077:櫛 ジテンふみお様
 安宿の洗面台で櫛の歯をはじいて爪の不揃いを知る
いかにも寂れた安いビジネスホテル。洗面台も、やっと顔が映る小ささで。
このうらぶれ感がたまらない魅力です。

069:花束 五十嵐きよみ様
 ヒロインの名前に使われそうもない花ばかり選り花束にする
かすみ、ゆり、さくら(これは花束にならないか)、らん・・・
確かに豪華なイメージではありますが、これらのない花束も素敵です。
個人的には青と白の竜胆に、アクセントで黄のフリージアかカラーを。

048:袖 中瀬真典様
 君の庭に見たり半袖より出でし白き腕(かひな)と君の子供を
叶わなかった恋の行方、ですね。見えたのが首筋でなく腕なのが、
いっそう淡い恋心を彷彿とさせ素敵です。

004:淡 文屋 亮様
 あの淡い嫌悪の感じ隠せずにふたり眺める夕日すさまじ
結句が良い。嫌悪は淡いのに、きっと真っ赤な、燃えるようないろ。

012:メガホン 星川郁乃様
 メガホンはそっとおろして聴きあてるあなたのなかにほそく鳴るA
結句が不思議とマッチして。Aが鳴るって不思議な言葉ですよね。

020:楽 星川郁乃様
 楽園は追われてもいいときどきは疲れてもいい 眉を描き足す
2つめ。結句がいい作者様だと思います。一文字開けて「眉を描き足す」が
きりりとした、前向きな表情を思わせます。

043:馬 飛鳥川いるか様
 願ひごとより恨みごとれんれんと絵馬に書きをり春のゆふぐれ
恨みごとながら「れんれんと」が「恋々」を思わせて素敵。きっと
意識的に掛けているのでしょう。

025:泳 水須ゆき子様
 泳げないひとが指差す澪の黒 月に喚ばれて大潮が来る
澪がいいですね。他の言葉だともっと印象が弱いから。

054:靴下 田丸まひる様
 膝上にうすく残った靴下の跡なぞられる梅雨が明けない
オーバーニーソックスで作者様の年代から服装の趣味まで見えてくる。
そんな中で「梅雨が明けない」が効果的です。現代っ子でも、
同じ憂鬱を共有できるんだ、という新鮮な悦び。

089:巻 望月暢孝様
 巻いていた髪を下ろしてまた巻いてお鍋を焦がすその髪の色に
これはもう、色っぽいですね、完璧に。巻き髪を何度も下ろしたり巻いたりするの。
それだけでドキドキしますよ。で、鍋焦がしちゃって。飴色になったあたりが
ちょうどこの色っぽい髪にマッチするのではないでしょうか。

092:届  望月暢孝様
 あまりにも遠く届かぬものを恋えば湯上りの裸身 手を空に挙げる
これも色っぽい。この方のお歌は、骨っぽい色気がして大好きです。
今回は2首の選歌でしたが、もっと読ませて頂きたいですね。


今日は少し、多めにとれました。優秀優秀。
いろいろすることがある筈なのに、とってもうまういきません。
もうこんな時間か・・・

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2005/08/11

過去ログ89

021:うたた寝 青山みのり様
 すくわるる否すくわれぬしじみらの歌うたた寝の覚めぎわに聞く
しじみの歌。生きたまま鍋に入れるのはどうにも気の毒ですが、
そうしないと食べられないんですよね。石垣りんの詩を彷彿とさせる。

027:液体 青山みのり様
 ステンレスボウルの澄んだ液体を最後の海として口にせむ
2首めです。前半の硬質な感じが、しっくりしていると思います。
ボウルから直接何かを飲むなんてことはあまりなさそうなのだけれど、
海を入れるならそれぐらい大きく、硬質で冷ややかな金属がいい。

055:ラーメン 八香田 慧(ようかだ けい)様
 つき合いで割り勘負けの帰り道すするラーメン汁も残さず
このお題での選歌は、私にしては珍しいかも。割り勘負け、という響きが
ものすごく共感できるのです。飲兵衛と割り勘するとね~
しかも相手が図々しいと、腹一杯飲んでますからね~
帰りのラーメンはたぶん、ひとりで不満足だったお腹を満たすもの。
こんなことなら、お店でしっかり食べてやればよかったな、なんて。

070:曲 みあ様
 このカーブ曲がりきったらゆるやかに落ちていく夜 桃がはじけて
桃が「はじける」というのは何だか新鮮です。熟すると柔らかくなって、
とてもはじけそうにないのですが、濃厚な甘い匂いがしてきそうなお歌。
この部分的な非現実感がいいのかもしれない。

046:泥 恩田和信様
 人の云う朱に交わればしゅらしゅしゅしゅ赤きワインに泥水注ぐ
言葉遣いの巧みさの勝利。「しゅらしゅしゅしゅ」なんて、57577の中に入れて
なおかつしっくりするのは、相当厳選した言葉だからだと思います。
脈絡なく見えて、実は「朱に交われば」の朱色と掛かっていて、そのまんま
「赤」が続くかと思えば泥水が入ってしまい、結局赤くなっていない。
茶化すような表現が、ぴったりなのです。


久々に選歌しました。このログ、少ないです。はい。
きっと、同じ方のお歌がたくさんだったのと、
ちょっと自分の好みのパターンを突き抜けたせいかもしれません。
美しいだけが短歌ではないし、切ないだけでもないし。
ストライクゾーンが広がりつつあるようです。

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2005/08/03

本歌取り推敲場所

mako様の「二進法の恋」でやっています。こっちへのアップと
推敲がおくれぎみです。そういうわけで・・・

持統天皇(じとうてんのう)
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

初夏の風真白きシャツを泳がせて洗い残しの紅香らせて
きぬぎぬの朝そろそろと夏の桟 薫風ふたりのシャツを掛けます

窓越しに洗濯物はたなびいて家族の幸(さち)を身につまされる
もう微妙季節はどっち虫干しのシャツを何枚畳もうか、ねえ
白衣なら死臭がしみて落ちないわ 爽やかな時期せいぜい免ずる

柿本人麿(かきのもとのひとまろ)
あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

独り寝にブランケットを巻くうつろ不死鳥山を越えて逢わぬか
歌わない鳥の目を見る泣きそうないつか沈黙した我が恋か

長い尾を振れば届くか寝室を隔てたあなた泣いてる寝息
ぬいぐるみ擦れた鼻先キスをしてたったひとりの寝室ともに
さやさやと羽擦れの音は「逢いたい」と聞こえるようだ孤独な我に


山部赤人(やまべのあかひと)
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

砂浜を裸足で駆けるもう九月ああ雪になる芙蓉峯愛づ
意味もなく海岸線で車停めことし最初の雪を乳房に
雪が降るわたくしが降る砂浜で待っているでしょあなたへと降る
山々が白く帽子を被るとき海は鈍色びゅうと泣くんだ
ああ寒いひとりごとなど呟いて砂浜歩く「雪だね」そうね

猿丸大夫(さるまるだゆう)
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋はかなしき

青銅の脚持つ鹿にいざなわれ哀しい赤に染まる 泣きたい
哀しみは理由ほしがり秋深くたとえばぴいと啼く牝鹿の眼

踏み分ける落ち葉の音は我が孤独もみじよその手われにかざせよ
鹿を追い落ち葉踏みつつ山道は眼福もみじしかと見つめる
牝鹿啼く声澄んでいる秋晴れか山に迷いて紅葉を愛でる

中納言家持=大伴家持(ちゅうなごんやかもち = おおとものやかもち)
かささぎの わたせる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける

爪先が凍えて橋を渡れない夜が明ける前むかえにきてね
天の川見立てて星の砂ならば駆けよ織姫の名の優駿

銀河系その星屑のつめたさよかささぎ逃げよ踏まれることなし
天に召す織り姫聞けよ駿馬なる牡馬逝きふたり星を生むのだ
この空は凍るようだと感じいる銀河が雪になりそうに降る

安倍仲麿(あべのなかまろ)
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも

月面の翳りがちがうあのひ見た夜空あなたと故郷が欠けて
白樺の影に浮かべる三日月の細さを憂う まだかえれない

ふるさとを棄てたわたしは二度と見ぬ利尻富士など照らすあの月
この星は北斗七星あの星は憶えていない君との夜空
星座など知らぬ筈ですただ月が同じく光ることがかなしい


喜撰法師(きせんほうし)
わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり

我と犬ともに暮らさん破れ壁もスイートルームのごとき幸福
けだものとして暮らそうか後ろゆびさす人だまれ わたしのお城


蝉丸(せみまる)
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

むじん駅「愛国」という名を持てど逢わず過ぎゆくおとことおんな
きょう囓る林檎の甘さひとりでもふたりでもない人生をゆく

参議篁=小野篁(さんぎたかむら = おののたかむら)
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人のつり舟

粛々とゆくひとり旅見送りもない寂しさを哀れむか海女
行き先をせいぜい遠く偽って消えゆく美学 捜さないでね

斜体が本歌、太字がmako様のところに出した歌、
普通の線が「今思いつき」の歌。
よってこのページは適宜更新していくことになります。
まとまったら本店の厨房を改造して、1人100首コーナーにします。

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2005/08/01

過去ログ88

019:アラビア 水須ゆき子様
 生姜味の珈琲は癖になるらしくアラビアン・カフェに風あまた寄る
ショウガ味、紅茶ならあるけど、珈琲ですか?不思議な味がしそう。
今度カフェオレに入れてみます.

051:泣きぼくろ 蝉マル様
 「通行区分違反、2点、9千円。」泣きぼくろある女性警官が
違反者なのに、泣きぼくろに気を取られてる。制服の持つ魔力???

079:ぬいぐるみ 前野真左子様
 首くの字に折られてキリンのぬいぐるみ そうかおまえは<燃やせるゴミ>か
なんだか、かわいそう。キリンちゃん、助からないのかな。後半の語りかけが、
その切ない場面を引き締めています。

084:林 前野真左子様
 様々な葉に逢ひ枝に逢ひながら雑木林を奏でゆく風
続きました。当たり前のような写生であるのに、新鮮に感じます。
爽やかにまとめたところが好感度高し。

049:ワイン 内田かおる様
 くぐもった声を吸い取るアンダンテ ワイングラスが光を撥ねる
そういうリズムでワインをすする、会話の途切れる瞬間。アンダンテがいいですね。

078:携帯 斉藤そよ様
 えいえんに鳴るはずのないその人の行進曲を秘めた携帯
着メロ、特別にして、それでも「鳴らないんだろうな」と諦めている。
そのへんを悲哀を出さず淡々と仕上げているのがすごい。

090:薔薇 斉藤そよ様
 誠実な言葉も持てず歯がゆくてセピアカラーの野薔薇のつぼみ
花がきっと雄弁です。なんて美しくささやかで、野性味ある花か。

054:靴下 三宅やよい様
 「ほら伝線」、くるぶし上げるバランスを抱きとめられてキスされる昼
女は踵を手に持ち「やだ~」なんて言ってる。支えてキスする男は手管ですね。
どきどきするのはストッキングのエロティズム。


今日は、ここまで~
なんかねえ、うまく更新できてません。明日は頑張れ、わたし。

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