2005/03/17

過去ログ20~22

まずは20から。
008:鞄 M.東矢様
 月夜には空とぶ鞄も見えつらむアンデルセンに抱かれし頃
アンデルセンというのが効いています。

097:静 謎野髭男様
 コルボ振る慈愛静けさ鎮魂のフォーレを聴きて心満ちたる
静かなやさしい音楽が聞こえてきそう。発句が佳いです。

012:メガホン 落合朱美様
 早春の訪れ告げむと黄水仙小さきメガホンつんともたげて
ああ、そうだ。水仙のつぼみってそんな感じですよね。歌として拝読し
改めて感動しました。

続きまして21
052:螺旋 行方祐美様
 今朝の香となるのか林檎ゆるやかな皮の螺旋をつづけるかぎり
倒置がとても効果的。そのままでもお歌の形としてはできあがっていますが、
最初に林檎を持ってきたことで、後半の印象が強まります。

002:色 きじとら猫様
 誇り高き金色(こんじき)の眼の野良猫よ鎧の柄はぞうきんなれど
野良猫の少し凝り固まったような毛並みを「鎧」「ぞうきん」と呼びつつ、それが却って
誇り高い目線を効果的にしていると感じます。

そして22
088:食 船坂圭之介様
 かすみゆく砂塵の中に隻腕の少女それのみ食(は)むパンの耳
090:薔薇 船坂圭之介様
 春雷のはしり抜けゆく薄暮れに薔薇は首(かうべ)を挙げしまま朽ち
船坂様の拾い上げる題材は、弱きもの、儚きものが多く、それが雰囲気によく似合う。
本当に厳選しての2首でした。

006:時 星川孝様
 還らざる時のはざまにふりしきる枯葉も雨もかすれたるまま
文字で拝読する以上、仮名の配分が上手なお歌には強く惹かれます。
「はざまにふりしきる」総て平仮名のところが、結句に馴染む。


今日も少ないですね~
私の歌があちらこちらに挟まっているのが、邪魔。
とはいえログだから、投稿している以上邪魔でも出てくるし。
今日は1首ぐらい詠みたい気持ちです。

マラソンとは無関係で。
 シャガールの青うつくしくピカソなら青は哀しく同胞なれど
昨日もちらっと書いたんですけれど、私自身がここで選歌させて頂いているお歌は
それぞれ詠まれている方も違いますし、当然皆さんの歌歴、環境など皆違います。
選んでいないお歌もあるわけですが、決してそれはそのお歌が下手だというのではなく
単に私の好みに当てはまらなかったということです。
気に入らない=下手、というのは乱暴な話で、ならば例えば、
ミレーは好きだから上手、ゴッホは嫌いだから下手とは誰も言わないと思うのです。
それは勿論、両者が巨匠である背景もありましょうが、
ミレーが初めて絵筆を握った瞬間から「落ち穂拾い」を描けたわけではなく
その裏には多くの習作、デッサンが存在するわけです。

デッサンを拒み、習作を拒んで、果たして名画は完成したでしょうか。
答えは「否」だと私は考えております。
題詠マラソンという場で、「せっかくだから、ここでデッサンの勉強をしよう」
「ここで少し他の方の作品に触れ、習作してみよう」と考えている方もおられるわけで
それを一蹴するような真似だけは、私は、したくない。
たどたどしくても瑞々しさが好きなお歌もあります。
技巧的であっても琴線に触れないお歌もあります。

私がこんな偉そうなことを言える立場ではないのですが、
どうか現在走っている皆様には、それぞれ心地よい達成感を得て頂きたいと
心から願うばかりです。

トラックバックしてくださったりコメントを下さった皆様、
本当にありがとうございます。

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2005/03/16

過去ログ17~19

まず17から
077:櫛 船坂圭之介様
 遠雷と絡み合いつつ梳る(くしけづる)珊瑚の櫛の邪しき音色
何で、何で、好きなんでしょう。もう理屈はない。

034:背中 行方祐美様
 ハグリッドの背中が笑うこの真昼アッペのオペがもう終わる頃
あの素朴な語り口調と広大な背中が、手術成功を彷彿とさせる。
ハリポタ大好き。

続いて18
052:螺旋 春畑 茜様
 今日われのこころは白き螺旋なりゆうぐれまでをゆるゆるくだる
後半のかな表記が素晴らしい。「ゆ」の音色が耳に残って。

017 陸 津山 類様
 蝶かわしかわせし離陸蜜蝋の色に染まりし蟻の1兵
うーん、どうしてか、心にずんと引っかかる。「蜜蝋」がいいですね。

044:香 田貫 砧様
 わが生は香車に似たり後ろには戻れず前に進みて散るのみ
いいなあ、ここで将棋とは。それが人生の凝縮であり。

更に、19
070:曲 謎野髭男様
 迷い込む谷中(やなか)路地裏くねくねと道は曲がりて川跡と知る
川の湾曲がいい。しかも山中に足を運んで。
084:林 謎野髭男様
 雪原に矯(た)められ刈られ身もだえし林檎樹(りんごじゅ)立てりオブジェのごとく
個人的見解ですが、この樹が林檎であることがベストマッチ。

003:つぼみ 田丸まひる様
 乳白のつぼみを間引く 誰にでも愛されているなんて思うな
色合い、愛の心理、それでも前向きな作者の心が伝わるお歌。作者はきっと
我が道をしっかり踏んでいるのでしょう。

004:淡(再投稿) 村本希理子様
 友情は淡くしづかに歯を立てていちごみるくを壊す放課後
「いちごみるく」のかな表記が甘くて、本気ではなさそうな諍いを連想。
甘味があるうちは、まだだいじょうぶ。


今日も少な目。ちょっと気がかりなことを目にしましてね。
私、好きなお歌を選んでいます。それが稚拙とか技巧的とか王道とか
そういうことは考えていないの。心でずんと感じられるのが佳いと思う基準。
たとえばね、与謝野晶子の歌集のお歌にだって「これ、きらい」というのはるのね。
確かに中には素通りするお歌もありましょうが、要は詠み手が何を言いたいか
そのお歌から想像できるのが好き。
背景説明というかね、そういうのはいくら佳くても、選んでいないのね。
だって、そこは私が「感じる」空白であって欲しいから。

人それぞれですが・・・
誰かが1首でも私のお歌の中から「好き」といってくれる。
それがまた、次につながる。
稚拙か、技巧的か、そういうことを問うには自分のスタイルを認める結社でやればいい。
趣旨を理解して参加したはずが、途中で他者を貶め逃げるのは・・・いやだ。

生意気言いました。ごめんなさい・・・でも言わずにいられない。
非難覚悟の発言です。

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2005/03/15

過去ログ16

006:時 てん様
 雨戸閉ざせば夜がわたしに染みてゆく時の長さを思いつつ啼け
啼く主体が曖昧なのが逆にいいです。余韻が深い。

067:スーツ 船坂圭之介様
 風めぐるなかの孤独に耐えてわがスーツもっとも醜きかたち
073:額 船坂圭之介様
 桔梗(きっきょう)の濃ゆき薄きをかかへ来て午後の額をひとは白くす
まったく雰囲気の違う2首を選びました。どちらにも作者の匂いがするのは見事。
特に「額」の歌の「桔梗(きっきょう)」の読みが好みです。

002:色 星川郁乃様
 ふかみどりから藍色の いまきみは色環の弧に閉じ込められて
色のグラデーションが見事。また「弧」が「孤」にかかるのかな?そういう雰囲気も好き。

016:たそがれ 中村悦子様
 海の名残を埋めてたそがれる背なの貝殻骨に砂のくちづけ
砂のくちづけにやられました。ざらりとして苦いくちびる。

068:四 葛城様
 玄室の壁画に佇む四獣神 天への帰還はいつなのだろう
かなり好みのお歌が多い方です。特にこのお歌のテーマの選び方に脱帽。


今日はとっても少ないです。自作もお休み。魔の3月の多忙がやってきました。
前半頑張って走ったけれど、ここでちょいと休息といったところですか。
ログはどんどん増えるので帰宅できない勤務日以外は極力拾いたいです。

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2005/03/14

過去ログ14、15

まず14から。
004:淡 桶田 沙美様
 パステルで描いた貴女の横顔は淡い色でも凛としていて
パステル画そのまんまの柔らかい言葉の選び方がいい感じです。

014:主義 やそおとめ様
 いちにんの主義のもとにて堰き止めしユーフラティスの甘き水恋ふ
きっと「ユーフラテス」だったら採らなかったと思う。「ユーフラティス」という響きが
そのまんま結句の甘さにつながっていて好き。

007:発見 K.Aiko様
 噎せ返る白百合 命追うように涸れるか 遺体発見現場
いかんいかん。また5月6日に記憶が戻ってしまう。

016:たそがれ 葛城様
 たそがれに邂逅(まみ)えし君は鈍色の影を携え遙と消えゆく
漢字の使い方が絶妙。お題にしっくり馴染みます。

006:時 住職(jusyoku)様
 時が過ぎ現在(いま)の君を過去の君をいつか許せる日の不確かさ
「現在の君を過去の君を」の破調が効果的。この危うさが結句にすんなりつながります。

064:科学 船坂圭之介様
 みだらなることに触るるな乙女等よ桜ちらちら舞う科学祭
本当に全部拾ってしまいそうで悩みます。科学祭と乙女の危うさが絶妙。

044:香 春畑 茜様
 沈香を焚けるひとときひとすじの煙は触れつ弥勒の指に
自分の指でなく、観音菩薩でもなく、弥勒なのがポイントでしょう。荘厳。


続いて15から。
004:淡 前野真左子様
 淡雪羹舌にしゆはしゆは溶かしつつ雛の宵の雨を聞きゐる
雛の宵、いいですね。雅な言葉の響きです。

019:アラビア 林本ひろみ様
 水槽にアラビア文字を書き綴る巻貝たちのいつもの伝言
着眼点がおもしろい。巻き貝がくっつくと、確かにそんな感じですね。

048:袖 葛城様
 益荒男の手結いの袖に滲み入りし滴を絞りてわが血となさん
勢いがあっていいです。すごく男っぽい躍動感。

15の選歌が少ないのは、要するにここいらで自分がひょこひょこ顔を出すせいです。
やっとこの段階で走り出したんですね~

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2005/03/13

過去ログ 12、13

まずは12から。
009:眠 尾崎弘子様
 ああけふは眠りすぎたる猫である噛みつかぬのにだれも起こさぬ
今回、猫が多く出てきますね。眠る猫は起こさない。いいなあ。

006:時 ケビン・スタイン様
 ジェラシーは人にするんじゃないんだね 未知なる時がこんなに苦い
時が苦い、って佳い表現だと思う。それがジェラシーにかかってくるなら尚更。

004:淡 住職(jusyoku)様
 君の髪、触れてはならない。今日から一人に還る。淡い思い出。
句読点の打ち方が絶妙。

041:迷  謎野髭男様
 独り聴く「アニュス・デイ(神の子羊)」にぞ涙する惑い迷える日々もありたり
惑い迷えるからこそ聴きたい曲も、ある。私にもあります。

002:色 宮崎 浩様
 孤独感はセピア色して孤独さへわからずにゐるテロリスト達
テロの凄惨さと渦中の人の「信念」だとか「理想」がセピア色にくすんでゆく。
気付かぬのは当人だけ。いいです。

007:発見 舟橋剛二様
 死後七日発見されずいた人のその七日間ほどの永遠
このお題で、こうきましたか。インパクトが凄いです。夏だったら、ちょっと嫌だ。


続きまして13から。
050:変 船坂圭之介様
 胸に在る影おもむろに濃くなりてやがて鴉族となる地獄変
056:松 船坂圭之介様
 たわむれになすな恋とぞ蟷螂の修羅ゆうばえの松原のなか
060:影 船坂圭之介様
 謀られはせじと気負いを背に見せてつまり乙女というものの影
まずいまずい。全部拾いそうになるのを抑えて厳選しています。贔屓じゃないよ、好きなんです。

009:眠 宵月冴音様
 ねむの木のねもとに獏の眠る日は眠りなき夜のねむりのねむり
ねむねむねむ・・・・催眠術のような柔らかな響き。

009:眠 深森未青様
 王様は王になる夢見られないぎろちんのぞむ窓に眠れり
凄い発想。処刑を待ちつつ絶対もう王冠はかぶれない、と知っている。


ログの増え方に追いつけません。初期ログが2列目になってるし。
今日はまず、自作については、テーマを決めてからになります。
その前にもういちど、お風呂にしよう。今度はラベンダーのアロマオイルを入れて。

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ログ11 そして「ショート・デート」

まずは、バーを一度中断して、本当にショートショートでもって僅か5連作
その名も「ショート・デート」甘めです。鬱積も翳りもなく、あっけらかんと。

さて、ログ11も拾いましょう。

009:眠 岩井聡様
 ゲンスブールその眠たげな目に沈む愛の極北すなわち視姦
視姦という結句の禍々しくも本音。美しさは淫靡なもの。

029:ならずもの 春畑 茜様
 なまけもの生煮えのものならずものそれぞれの曳く春のかなしみ
このお題は苦慮しましたが、こんなに美しい結句がある、絶品。
030:橋 春畑 茜様
そのうえをひとのかなしみ渡るとき橋はやさしくゆうぐれを揺る
ゆうぐれを揺る。美しい言葉です。

011:都 風花様
 雲間より光の帯は伸びて行きアトランティスの都を照らす
アトランティスに、1票。

016:たそがれ 露稀様
 たそがれは逢魔が時とも言うらしい それなら君も魔物でしょうか
君も魔物。私自身も、きっと・・

014:主義 クロネコ 2005年03月03日 (木) 12時58分
 その若者 大層に掲げる 自由主義 ニート風情が 偉そうに語るな!
そうだそうだ!共感するね。

016:たそがれ 落合葉 様
 たそがれは逢魔が時とぶらんこにゆらゆらゆれてかたくにぎる手
なんといっても、ぶらんこでしょう。仮名表記がちょいクラシカル。

008:鞄 吉野楓子様
 くたびれた往診鞄はグランパのようなやさしさ満タンにして
祖父の如きやさしさ。脱帽。

018:教室 星桔梗様
 教室に一輪挿しの机有り心は共に卒業をする
わかります。仲間を喪った重みがこれほど客観的に、切実に感じるお歌、貴重。


あはは、けっこう進みました。頑張るぞ。

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2005/03/12

過去ログ9,10

ログの速度の方が早いので、ちょっと根性を入れて。

まずは9から
004:淡 こはく様
 アッサムの香りをほどく要領で練り込んでいる時差、いえ、淡く
アッサムといえば紅茶。というぐらいアッサムのミルクティーが好き。で、「淡く」が
ミルク多めを連想させてくれます。「香りをほどく」がいい。

015:友 さよこ様2005年03月02日 (水) 16時42分
 身の傍に友と呼びたき人もなし春一番のごうごうと鳴る
ふいに気付いた孤独感が風の擬音に凝縮されている感じ。特に切実そうでないのに
胸に響くのは、この「ごうごうと鳴る」のせいだと思います。

009眠 西中眞二郎様
 物なき日タバコ代わりのイタドリを吸いいし父もここに眠れる
そういう代用品があったんだー、と感心しつつ、亡き父親を回想する上で
イタドリは絶妙な配置だと思います。

009:眠 風花様
 何故か今日とても寂しい僕だから眠る人魚の封印を解く
人魚の封印。淡々とした口調ながら非現実をもってくるところが、このお歌にぴったり。

037:汗 船坂圭之介様
 満身に汗しとどなり性欲を欠きし老いたる馬駆ける見ゆ
二通りの読みができると思うのですが
 1 この馬は往年の名馬で、気性が悪くセン馬にされた。
 2 もう繁殖に使えないほど年老いた馬である。
個人的には1の方が哀愁漂って好きな解釈ですね。

042:官僚 船坂圭之介様
 検屍官僚友と在り夕暮れの花散る下のイタリアンカフェ
検死官だってだってにんげんだもの~(Qooのテーマで)花の下でイタリアンもあり。
しかし、その花は、散っています。春なら桜散るのは当然ですが、トップに
「検死官」があることで、別の意味の翳りを帯びるのでした。


お次は10から。
011:都 星桔梗様
 雫溜め都忘れの花の咲くあの頃ふたり過ごした場所で
清楚で美しいです。結構好きなお歌が並んでいました。

005:サラダ 深森未青様
 たれひとり味を知らずもサラダバーに常に残れる緑のぜりい
あれね~○○味なんですよ。でも言うと無粋だから内緒。ぜりいちゃんは謎のままで。

003:つぼみ 里都 潤弥様
 海の底が海をそのまま食むように僕泣きながらつぼみ噛みます
すごいインパクト。なんでつぼみ噛んでるの?素通りできません。

003:つぼみ 五十嵐きよみ様
 私ではないわたくしを想うときたとえばその名は<つぼみ>あるいは
文字で読むなら、括弧の使い方も技のうちですね。普通のかぎかっこだと、ここまで
強い印象を持つことはできなかったかもしれない。

006:時 島菜穂子様
 L'Air du Temps(レールデュタン) 満ち欠けを繰り返しつつ永遠の時を月は刻めり
この香りが漂ってきそう。鳩の羽音がしそうな夜でした。


ちょっと少な目になったかな?
次にいけそうなら、もうちょっと拾いたいところです。

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2005/03/11

過去ログ 8

どうも、ログのできる速度に負けています。休日は頑張っていきたいところ。
書き込みもだんだん頂けるようになって大変嬉しいです。
私も、時々、他の方の選歌などを見ていて自作を見つけると
くすぐったいような嬉しいような気持ちになるのですが、
今まで自ら書き込んだことがなかったのです。でも今年は・・・完走した後なら書けるかな?

今日は過去ログ8から。だんだんと選手一同出そろってきた感があります。

022:弓 船坂圭之介様
 弓月は白きうたかた冬の夜のこころ凪がしむスペイン舞曲
026:蜘蛛 船坂圭之介様
 易やすと溺れてゆけぬゆけぬゆえ海をもっとも恋ふ月と蜘蛛
031:盗 船坂圭之介様
 存念のひとつ盗まれ夜の霧にわが影はまた嵩を失ふ
036:探偵 船坂圭之介様
 かぐはしき花よすなはち咲き誇る愚劣は隠せわれは探偵
気が付けばまたこんなに採ってしまいました。あまりにも拾いすぎて涙を呑んだお歌も。
全体的に、他の方も似たお歌を詠まなくはないのですが、言葉の選び方が巧い。
巧いと言ってしまってはおこがましい気もしますが、私の好みだ、と言うのならしっくりくる?
例えば「弓」のお歌で月と弓を重ねる発想はあっても、冬とスペインが融合するには
全体の流れに違和感を覚えないことが大前提。
「蜘蛛」のお歌でも月が出てきますが、こちらの取り合わせは逆に斬新。
私自身、かつて蜘蛛の巣を「銀のレヱス」に見立てた歌を詠んだことがありますが
そこには蜘蛛の姿がもっと生々しく存在したのでした。こんなに斬新に、
しかも違和感なく蜘蛛を取り上げることはできなかった。
結論を言えば、歌集になっていたらきっと買うでしょう。

005:サラダ 春日山様
 喧騒の街に一日(ひとひ)を過ごしきて香焚き寛ぐ心のサラダ
香を焚きしめた風雅な休息を「心のサラダ」と詠む発想に感服。きっとこのサラダは
心に佳い栄養素がぎっしりなのでしょう。私は、伽羅がいいです。

018:教室 春畑 茜様
 教室に物理教師を待ちながら黒板消しを扉は挟む
笑いました。1,物理が嫌い。2,物理の先生が嫌い。3,両方。
私は3でしたね。黒板消しは挟みませんでしたが、気持ちはわかります。

007:発見 風花様
 エウロパの氷の下の海の中発見された二人の化石
やられた。何故化石のお題でこの地名が?ボギャブラリーの豊富さと、使い方の巧さ。
エウロパは氷に閉ざされた惑星ですが、同時にヨーロッパの古い名前でもある。
もしかしたら例えばスイスあたりの氷河の下から、化石が発見されるかもしれない。
そんなとき、きっとこのお歌を思い出すでしょう。

002:色 土岐友浩様
 地球儀の平野に塗りわけられているオリーヴ色は祈りのかたち
「オリ-ヴ色は祈りのかたち」結句の仮名遣いと漢字を「色」「祈」に抑えたのも効果的。
前半「地球儀」「平和」「塗」と漢字が続く分、後半がより柔らかく心に届きます。

004:淡 露稀様
 今までで綺麗な恋はひとつだけ 淡い初恋5歳の電話
かわいらしいようでいて、ずばり恋の真核を突いている視点の鋭いこと。
本当に「はじめて誰かを好きになった」ピュアさは1回きりなのでしょう。
だんだん慣れて、「どきどきする」とか言いつつ何処かで計算している自分が嫌い。

089:巻 斉藤真伸様
 巻き爪の恐怖を説きてチョビ髭の外科医はカルテを一枚めくる
チョビ髭め、お前さんは巻き爪になった経験があるのか~?と突っ込みたくなる。
こういう、臨場感溢れる中に滑稽なお歌も好きなのでした。
私は巻き爪です。毎度毎度、化膿する前に自分で抜いています。
「悪循環」「切るな」と医者は言いますが刺さる痛みは我のみぞ知る・・・
あれ?ちょうど31文字で愚痴ってしまいましたね。化膿したことも1回あります。
焼いた針で処理し、爪もきっちり除去しました。痛かった。でもやらないともっと痛いの。


コメントを頂いても現在個別のお返事を差し上げられず恐縮ですが、
可能な限り徐々にお返事させて頂きますので、宜しければまた覗いて下さいね。
五十嵐きよみ様主催のイベント、参加したかったんだけど昨日の帰宅が〆切後だったのでした。
次回は参加できたらいいな~

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2005/03/10

過去ログ 7

初めてこのページでコメントを頂きました!嬉しいですね。
ついでに、連作の題も決定。そのまんま「Bar Betty's Blue」とします。
どこまで美酒を出し続けることができるのか?

きょうは過去ログ7からピックアップ。
好きな歌を拾うのは、活力源でもあります。


004:淡 中村悦子様
 古代湖の淡海が瞑い顔をするたそがれどきは追憶のとき
全体の流れが綺麗。どこか翳りのあるお歌は好きです。

073:額 斉藤真伸様
 葡萄蔓(えびかずら)の浮彫照らすうすあかり額縁店のとあるいちにち
この方のお歌は、好きなものが多くて迷いますね。額縁店がキーワードでした。

015:友 船坂圭之介様
 かつて死は遠きあこがれ労咳の友よしばしは酔はむ汝が眸に
また拾わせて頂いています。好きです。本当に。友のお題で労咳が出てくるとは。
斬新かつ翳りのある歌に弱い私です。

002:色 のぶれば様
 臙脂でも朱でも赤でもない色をきゅっと玉にし生きてる痛み
赤系の色が曖昧に、しかも凝縮していて、はっとします。
トップの臙脂色が特に効果的。

002:色 深森未青様
 老い蛙つひの魔術と枯れ草の色を擬しまま息絶えにけり
繊細な観察眼、蛙と魔術のとりあわせ、死の色合い。素敵。


今日は少な目の選歌になってしまいました。足下で愛犬が愚痴をこぼしています。
遊びたい様子ですが、構おうと手を出すと逃げていきます。
要は私をからかって、それが楽しいのです。困ったちゃん。
もうすぐ週末。ちゃんと埋め合わせは、してあげるから、ちょっと待っていてね。

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2005/03/09

過去ログ 6

どうしよう。自作が進まない。そういう日は無理しないで人のお歌に触れましょう。
拾い終わったらきっと、1首ぐらい、詠めるかも知れないから。


010:線路 謎野髭男様
 韓国の青年轢かる線路ありイルボンサーラム(日本人)救わんとして
014:主義 謎野髭男様
 主義に生き主義に死するを理想とぞ思いしときもありけりしかな
この方のお歌は(拾い読みした限りは、ですが)どきっとする鋭い問いのような
ずんと胸に響く印象があります。

050:変 斉藤真伸様
 とりどりの変死ならべた実話誌のページをめくる人を待つよる
人待ちの時間つぶしに変死体・・・あまり会いたくない相手なのかも?と憶測。
変死体のインパクトで採りました。

051:泣きぼくろ 谷口純子様
 泣きぼくろあればみせてよ密密とまつげのしろき顔によりゆく
どきん。猫のいない光景の色気もまた佳し。

001:声 青野ことり様
 呼ぶ声にふり向けばただ風がゆき もの問いたげなミモザが揺れる
新鮮。香川県ではオリーブと並んでミモザを栽培しているとか。ちょうどこの時期、
ミモザ祭りではなかったかしら。私もミモザ使いましたが、数段上の輝きにやられた。

030:橋 斉藤真伸様
 この橋をわたる影あり夜の川に下弦の月が砕けて映る
下弦の月、いいですね。詠まれる情景としてはそれほど斬新でもないのでしょうが、
月の選びかたが好きです。上弦より消えてゆこうとする下弦の月の方が儚い。

002:色 春畑 茜様
 眼のなかに春はしずかにひらき出す印度孔雀の羽色をして
印度孔雀。いいです。極彩色と、国名の漢字表記が絶妙。

003:つぼみ 藤田健一郎様
 長槍の先煌めかす羅馬兵聖痕はまたつぼみの如し
また拾っちゃった。羅馬。そして聖痕。つぼみでこうきたか~と新鮮でもあり。

004:淡 岩井聡様
 淡雪がにじむ舗道よシベールよあの日曜日はなかったことに
どきっとする独白。こんな呟きが耳に入ったら、きっと、振り向いてしまう。

002:色 はぼき様
 焼き色を確かめながら裏返すサンマ一匹土曜日の午後
素朴に温か。こういうお歌にも、心揺らぐことがあります。サンマが1匹で独りを表現し
しかも地に足の着いた生活感を感じさせる。さりげないようで巧いと思います。


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